著者
須戸 和男
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:4516265)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.29-60, 2007-12-06

今日における経済のグローバル化は,財・サービスのクロスボーダーな取引の増大,高度な情報通信技術の発達により,巨額な国際金融取引・資本取引が可能になったことに伴い,アメリカの多国籍企業や大企業の国際的租税回避行為が増加してきた。 一方,1970年代以降の景気後退に直面したアメリカ連邦政府は,これに対応するため,従来の租税優遇措置を拡大し,さらに多くの新たな租税優遇措置を導入した。租税優遇措置の目的は国内経済の活性化を図り, 国内産業の国際的競争力を高める経済政策であったが, この政策目的を逸脱する租税優遇措置の濫用行為が急増してきた。国際的租税回避行為の増加と租税優遇措置の濫用行為の増加は, 連邦政府の税収減少をもたらし, 巨額な財政赤字を生み出す結果となった。 本稿は,このような国際的租税回避行為および租税優遇措置の濫用行為に対する政府の対抗措置とその効果とその測定について検討すると共に, 租税回避行為を防止するためのあり方について考察を試みるものである。
著者
森 杲 森 杲
出版者
北海道大学
雑誌
經濟學研究 (ISSN:4516265)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.143-180, 2008-06-12

19世紀末から1929年大恐慌にいたる数十年は, 企業合同をつうじてアメリカの全産業に巨大株式会社が出現し, それらが証券市場を舞台に活動を展開したことによって, 今日のアメリカ証券市場の原型が形成された時代である。この時代, ニューヨーク証券取引所を筆頭とする全国のいくつもの取引所において, それぞれどんな産業分野の株式が上場され(上場株数)どれだけ取引されたか(取引量), 取引所相互にどのような関係があったか, 時期により株式取引の需要・供給を規定した要因が何であったかといったことにかんして, 本論文は入手しうるおよそすべての取引記録を渉猟し, 基本的な数量データに集計した, およそ初めての労作である。今後どのような問題関心でどんな側面からアメリカ証券市場の歴史を取り上げるにせよ, 本論文を無視して研究をすすめることはできないと思われる。