著者
飯島 潤 大竹 哲平 保坂 伸一郎
出版者
みずほ学術振興財団
雑誌
みずほ学術振興財団懸賞論文
巻号頁・発行日
vol.44, 2003

バブル崩壊後長引く不況を経て、間接金融を軸とした日本の金融市場は転換期を迎えており、直接金融市場の発達が必要となっている。それは不況による不良債権の増加などにより、間接金融からの資金調達が困難と考えられるからである。したがって、市場の整備という礎を築かなくてはならない が、既に日本をリードしているような企業が上場している東証など既市場には今以上の発達をそれほど望める訳ではない。そこで、新しいビジネスを生み出し、日本経済の未来を担うベンチャー企業を中心とする新興市場の発達が必要である。したがって、日本の直接金融市場の発達とは新興市場の発達であるといえよう。新興市場の発達のためには、特に資金供給の場となる証券市場の整備が急務である。また、ベンチャー企業にはリスクマネーの供給が必要であり、この重要な役割はベンチャーキャピタル(以下VCと略記)が果たしていくべきであると考えられる。しかし、日本のV Cには分散投資、ハンズオフなどが問題があると思われる。したがって、米国VCにおいて主流であるハンズオンを用いて、経営に積極的に参加する必要がある。米国では独立系VCが大きなシェアを占めているのに対して、日本では銀行系VCが大きなシェアを占めているという特徴がある。しかし、ベンチャー企業1社あたりの投資割合は低く、積極的な投資を行っているとはいえない。したがって、特に日本のVCの大きなシェアを占める銀行系VCの活躍が望まれる。このことは決して従来の間接金融依存の脱却によって直接金融への移行を望むのではなく、間接金融と直接金融の調和を図ることによる直接金融の成長を押し進めていく必要があるためである。これは間接金融との融合を図る上で銀行との提携を行っている銀行系VCを中心に、ハンズオンなど積極的な行動を示すべきであると考えられるからでる。指導教員:安田行宏(経営学部) みずほ学術振興財団懸賞論文 第44回(2003)3等