著者
張 宇飛
出版者
佛教大学中国言語文化研究会
雑誌
中国言語文化研究 (ISSN:13466305)
巻号頁・発行日
no.19, pp.33-49, 2019-08-01

小論は明治期におけるロシア作家コロレンコの受容を整理し、小山内薫が雑誌『新小説』で発表した評論「露国の小説家ウラヂミール・カラレンコ」が魯迅の「摩羅詩力説」のもう一つ材源であることを明らかにするものである。小山内薫のこの文章は明治期におけるコロレンコを最も全面的に紹介した文章である。この文章の中で、コロレンコの小説「末光」についての紹介はちょうど魯迅の「摩羅詩力説」の結論部分が参照した内容である。この材源の発見は留日期の魯迅が明治期の刊行物の外国文学の評論や翻訳を通し、自らのテキストに引用したことを呈して、「魯迅とコロレンコの関係」という課題の研究、ひいては留日期の魯迅と外国文学、とりわけロシア文学の受容という研究に資するものであると考える。魯迅コロレンコ「摩羅詩力説」小山内薫明治日本