著者
長谷川 理成 畠山 富治 吉田 俊郎
出版者
千葉県原種農場
雑誌
千葉県原種農場研究報告 = Bulletin of the Chiba-Ken Foundation Seed and Stock Farm (ISSN:03875229)
巻号頁・発行日
no.6, pp.1-8, 1984-03

昭和57年8月2日に中部地方に上陸した台風10号による乾燥した強風のため、千葉県下全域に褐変籾の発生が認められた。農産物検査規定・生産物審査基準によれば、褐変籾は被害粒とされ、製品種籾への混入の許容最高限度は0.5%であり、種子場では褐変籾の選種方法・種子適性が問題となった。1. 乾燥した強風が吹走した8月2日前後に出穂した圃場では、褐変籾・不稔籾が多発し、特に晩生品種コシヒカリに発生が多かった。2. 褐変籾指数と登熟指数との間には、r=-0.656**という強い負の相関が認められ、褐変籾歩合が40%を超える試料では著しい登熟不良となった。3. 褐変籾は、正常籾に比べ粒厚・比重ともに劣った。また、一般的な選種方法である篩目2.2mmの粒厚選、比重1.13の比重選では、農産物検査等の許容最高限度の0.5%以下まで褐変籾を除去することはできなかった。4. 褐変籾の発芽率は、98.0~100%で十分な発芽能力を有した。5. 褐変籾の苗の生育は、適切な育苗条件下では正常籾に劣らないが、出芽期の温度不足という不良環境下では、出芽の揃いが悪く、草丈・苗乾物重が小さくなった。6. 調査結果から、褐変籾を準種子として使用する場合、種子センターにおける篩目2.2mmの粒厚選で実用的には十分であると考えられた。7. 障害籾の種子適性の判定には、発芽力調査に加え、育苗試験・種子の活力判定を行う必要があると考えられ、その方法については今後の検討課題であると思われた。