著者
酒井 温子
出版者
奈良県森林技術センター
雑誌
奈良県森林技術センター研究報告 (ISSN:13459864)
巻号頁・発行日
no.41, pp.85-91, 2012-04

高速抽出法により得られた柿果実由来のタンニン水溶液の木材防腐防蟻効力を評価した。JIS K 1571に準じた室内防腐性能試験の結果、このタンニン水溶液を木材試験体に加圧注入した場合も、塗布処理をした場合も、腐朽による質量減少率は高く、このタンニン水溶液の持つ防腐効力は低いと判定された。また、野外防蟻性能試験の結果、このタンニン水溶液で処理された木材は、イエシロアリによって著しく食害された。無処理試験体よりも食害が大きかったことから、タンニン水溶液中のなんらかの物質がイエシロアリを誘引した可能性がある。一方、このタンニン水溶液に銅や亜鉛を添加すると、防腐効力が向上した。タンニンが金属とキレートを形成し高分子化することで、水に溶脱しにくくなったことや、添加した金属がもともと抗菌力をもつことが、防腐効力の向上に寄与したと考えられた。しかし、防腐効力の向上は見られたものの、銅や亜鉛を添加した場合も、JIS K 1571に定める防腐防蟻剤としての性能基準を満たさなかった。