著者
関本 均 落合 美和子 多田 晃子
出版者
宇都宮大学
雑誌
宇都宮大学農学部學術報告 (ISSN:05664691)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.9-16, 2003-03-31

大気環境中に成育する植物は、エアロゾルなどの乾性沈着物質とそれが降水中に取り込まれて降下・沈着する湿性沈着物質の影響を受けており、大気中の窒素化合物である窒素酸化物やアンモニアも乾性または湿性沈着物質として植物葉に沈着し、養分として吸収利用される場合がある。エアープランツ茎葉部の陽イオンの吸着能力を表す指標として、茎葉部の陽イオン交換容量を調べたところ、エアープランツのそれは、ツツジの4倍、スギ、ヒノキ、クロマツの葉の37倍大きかった。エアープランツは針状葉を持つこと、葉には無数の毛状組織が発達していることなどの形態的な特徴が茎葉部の大きな陽イオン交換容量をもたらすと推察された。陽イオン交換容量の大きい茎葉部は、陽イオン性の降下物を吸着しやすく、利用しやすいと考えられる。エアープランツによる降下窒素化合物の利用率は、NO3-よりもNH4+の方が顕著に高いという結果は、この特徴に由来すると思われた。このように、エアープランツには、茎葉部の陽イオン交換容量が大きく、陽イオン性の降下物を吸着できる能力が高いこと、根がないので窒素の経根吸収を考慮しなくてよいため、大気由来の降下窒素化合物の吸着と利用を直接評価できるという特徴があるので、エアープランツはNH4+などの陽イオン性降下物の沈着を評価できる指標植物になるかもしれない。