著者
桑原尚子
雑誌
情報教育シンポジウム2000論文集
巻号頁・発行日
vol.2000, no.9, pp.63-70, 2000-07-29

2003年から文部省の指導要綱に基づき、高校で「情報」が必修科目となる。この後、大学の「一般情報教育」はどのような目的、内容を持つべきかについて考える。現在まで学校教育での情報教育はコンピュータ・ネットワークの原理、活用等工学基礎教育としての情報教育の色彩が強い反面、情報の持つ意味、情報倫理などについての重妥性の把握が弱く、また、その教育は整合性をもって提示できていないと感じられる。この背景の第一としては、情報教育の目的の設定があいまいたったこと、第二は情報概念の把握が弱く、また暗黙のうちに情報工学の情報概念を前提にしていることが上げられる。私は大学一般情報教育の目的は「情報社会のありかたを決定してゆく力(情報化について判断、評価、制御する力)」の養成とすべきと考える。この目的を達成する内容は、第一にコンピュータ・ネットワークという物理的実体から情報概念を切り離し、広く世界に存在する情報系の扱う意味を前提にした情報概念を基礎とし、これに立脚する視点を確立すること、第二にこの基盤の上に、現在の技術とそれから派生する問題点について個人として判断力を持ち、その上で社会的コンセンサスの形成を行うこと、となる。