著者
香川修見
雑誌
情報教育シンポジウム2001論文集
巻号頁・発行日
vol.2001, no.9, pp.265-265, 2001-08-21

学校で与えられるほとんどの課題には正解が用意されている.学生は正解や正解に到達する方法を教えられ課題に取り組む.しかし,社会で遭遇するほとんどの問題には正解が用意されていない.問題の所在を見付け,調査や議論をして対策を立て,実行して解決に至る. 学生が問題を見付け解決策を考えるスタイルの教育が必要なことは多くの教師が気付いている.海外では特にインターネット普及を契機に,このスタイルヘの取組みが盛んである.しかし,我国では筆者の知る限り,卒業研究などのゼミナール以外で本格的に授業で実施している例は少ない.筆者は大阪学院大学で,情報系と非情報系の学科の学生を対象にコンピュータ演習(選択)を担当している.この科目では,学生は興味のあるテーマを自ら設定し,自分のペースで取り組む.教師からの知識伝達は可能な限り少なくする.即ち「教えない授業」である.学生は自らWebやPowerPointなどのコンピュータツールの使い方を学び,それらを使って調査・発表・報告書提出をし,教師は助言と評価を与えている.途中経過であるが次の成果を得ている.(1)一方的な伝達型の講義に比べ知識や技術の量と定着度が大きく,達成感も大きい.(2)脱落する学生も多く学習の格差が大きい.(3)学生・教師ともに負担が大きい.半年(3時間/週)では足りない.(4)コンピュ-タツールのオンラインマニュアルやサポート要員が重要な役割を果たす.本稿では非情報系学科での「教えない授業」の手法と途中経過について述べる.