- 著者
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向山 恭一
- 出版者
- 新潟国際情報大学国際学部
- 雑誌
- 新潟国際情報大学 国際学部 紀要 (ISSN:21895864)
- 巻号頁・発行日
- vol.6, pp.27-42, 2021-04-01
移民社会の到来とともに増大する多様性に、福祉国家を支える国民的連帯は応答することができるのか。政治学者のキース・バンティングとウィル・キムリッカは編著書『コミットメントが課す試練』(オックスフォード大学出版局、2017 年)の「序論:多様な社会における連帯の政治的源泉」のなかで、正しい社会において連帯が必要とされる倫理的理由、多様性と連帯(移民と市民)が敵対関係に置かれる言説的付置状況、そして増大する多様性のもとで包摂的連帯を実現するための政治的視座を規範的=経験的に論じることで、この問いに肯定的に答えている。新自由主義とポピュリズムに挟撃された福祉国家を守るためには、なによりも連帯の共同体であるネーションを再帰的に想像しなおさなければならない。本稿の目的は、こうしたバンティングとキムリッカの議論を手がかりに、現代の移民/多文化社会において包摂的連帯にもとづく福祉国家を構想するための倫理的=政治的な見取り図を提示することである。