著者
深澤 茂俊
出版者
神戸親和女子大学福祉臨床学科
雑誌
神戸親和女子大学福祉臨床学科紀要 = Bulletin of social welfare, Kobe Shinwa Women's University (ISSN:18812414)
巻号頁・発行日
no.13, pp.15-29, 2016-03-31

近代の聴覚障害教育の歴史を見ると手話から口話への流れがあり、手話を否定し、手話を排除する歴史があった。この事実に基づき見てみると、「手話か口話か」といった考えの教育ではなく、「手話も口話も」といった教育の大切さを知ることができた。また、盲聾教育の歴史は、創意工夫の歴史であった。さらに、聴覚障害から視覚障害を受障した事例と、視覚障害から聴覚障害を受障した2事例を通して、多様なコミュニケーション手段が開発され、受け入れられる、そして容易に活用できる社会の大切さを伺い知ることができた。このような社会の実現こそが、聴覚障害児・者のノーマライゼーションを実現するといえよう。
著者
山口 倫子
出版者
神戸親和女子大学福祉臨床学科
雑誌
神戸親和女子大学福祉臨床学科紀要 = Bulletin of social welfare, Kobe Shinwa Women's University (ISSN:18812414)
巻号頁・発行日
no.13, pp.75-85, 2016-03-31

1998年以降の自殺者数の増加や、精神障害等に係る労災請求件数の増加などから、メンタルヘルス対策が喫緊の課題であった。そこで2014(平成26)年6月に「労働安全衛生法の一部改正」により、ストレスチェック制度が創設された。この制度の目的は、メンタルヘルス不調の一次予防、労働者自身の気付きを促す、職場環境の改善の3点である。制度の概要と流れは、①事前準備、②ストレスチェックの実施、③面接指導の実施、④集団的な分析による職場環境の改善となっている。そこで、精神保健福祉士は一定の条件をクリアすれば検査の実施者となれることが規定された。これは、精神科医療現場における精神保健福祉士の活躍に対する一定の社会的評価であると考えられる。また、この制度に関しても、面接指導への勧奨や職場環境の調整、あるいは専門機関への紹介等の支援など、個別ケースワーク的なかかわりが期待されるため、精神保健福祉士の力が発揮できるのではないかと考える。 昨今、医療現場だけでなく、教育や司法といった分野においても精神保健福祉士が活躍しているが、ストレスチェック制度導入をきっかけに、今後、労働現場におけるメンタルヘルス対策が進み、産業保健分野においても精神保健福祉士に対するさらなる期待と可能性が広がると思われる。