著者
加地 大介
雑誌
科学研究費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書 平成16-18年度
巻号頁・発行日
pp.1-71, 2007

本研究は、実体の本質に由来する種的様相(sortal modality)が重要な実在的様相のひとつであると考える立場から、種的様相にまつわる推論を適切な形で処理できる種的様相論理(Sortal Modal Logic)の形式体系を構成すること、そしてその形式体系を前提として、実体と種をその中心的位置に組み込んだ、実体主義的存在論の体系を構築することを目的として行われた。前者に関しては、ロウ(E.J.Lowe)の(第一階)種的論理((1st Order)Sortal Logic)の体系に様相演算子を付加してその固有公理を様相化したうえで二つの様相的固有公理をさらに追加し、その基礎論理を様相論理S5の公理系へと拡張することによって得られる種的様相論理の体系SS5を構成した。そしてその形式存在論的意義についてアリストテレスの様相三段論法と比較しながら考察した結果、その体系が実体主義的な存在論を体現していることが確認された。後者に関しては、まず、種的実体様相と実体の持続に由来する時間的実体様相との間に次のような並行性が成立することを見出した:(1)分類・生起・傾向命題と過去・現在・未来命題とがそれぞれ、一種の必然性・現実性・可能性を表すde copula的述定様相を含む命題として性格づけられる。(2)それらの述定様相はそれぞれ、それに対応する内包的真理様相の源泉を表す十分条件となる。(3)未来命題と傾向命題は真理値を持たない場合があり得るのに対し、それ以外の命題はそうではない。そしてこの相違は、単純部分論理(Simple Partial Logic)における外延的な真理様相演算子によって表され得る。そのうえで、これらの並行性に基づきながら、具体的事象の最も基底的レベルにおいて不可欠なde copula的述定様相として種的実体様相と時間的実体様相とを位置づけることにより、実体を基礎的存在者として認定する存在論的体系の骨格を定めた。