著者
加々美智 成田浩
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【背景】過去のMRI安全の報告によると、遠赤外性を謳ったインナーにおいて、火傷の報告や画像への影響が報告されている。また、衣服の装飾品や、クリーニング後のホッチキスの芯が画像に影響を及ぼす可能性は知られている。MRI検査時に検査着に着替えさせ検査を行うことが推奨されているが、インナーは身につけたままで検査を行っているケースは多い。2003年に株式会社ユニクロよりヒートテックが発売されて以来、保温インナーは世界中で広がっている。また、各衣服メーカーより類似製品が販売され始め、国内では多くの方がヒートテックや類似製品を着用している。【目的】MRI検査時に患者が着用している保温インナーが、画像や人体に及ぼす影響について基礎検討をすることを目的とした。【使用機器】(株)日立メディコ社製1.5TMRI装置ECHELON OVALを用い、本体付属ファントムとNVコイル、保温インナーや、一般的なインナーなどを用いた。【実験方法】コイル中心にファントムを配置し、SE法、およびGE法において検討を行った。ファントムには温度計を張り付け、何も巻き付けない、一般的な肌着、保温下着、スポーツインナーなど巻き付け素材を変更し、5種類の撮像を行った。また、巻き付け回数を変化させ撮像を行った。撮像開始は、ファントムの流動がなくなるように20分以上待機してから撮像を行った。検討方法は差分法を用いてSNRを測定し、t検定を行った。【結果】肌着の種類や巻き方に応じてGE法ではSNRの低下がみられ、5%以下で優位に差が生じた。【まとめ】検討によりインナーの材質、厚みによってはMRI信号に影響を及ぼし、患者の体温を上昇させる可能性が示唆された。厚生労働省のSARに関する記載では、患者の温度変化に関して、第一次水準管理操作モードで1度以上の変化がないことや、体温の最大値は規定されている。保温インナーはこれらの規格を超える恐れがあり、注意が必要である。
著者
雨宮史織 高橋浩一 美馬達夫 吉岡直紀 大友邦
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【目的】自発的神経活動および認知機能異常とこれの治療による変化を低髄液圧症候群/脳脊髄液減少症患者において縦断的に評価する事。【方法】低髄液圧/脳脊髄液減少症患者の硬膜外ブラッドパッチ術施行直前及び手術一ヶ月後に安静時fMRIおよびworking memory課題を用いた認知機能評価を施行した。安静時fMRIは撮像タイミング補正、体動補正、空間的標準化、平滑化による標準的前処理の後に線形トレンド除去、低周波成分抽出(0.01-0.1 Hz)を行い同帯域での振幅の積分値を各全脳平均値で除して標準化し、自発的神経活動の指標とした(amplitude of low-frequency fluctuations, ALFF)。認知機能指標は2-back課題の正答率とした。これを回帰変数としてALFFの全脳線形回帰分析を行い両者に有意な相関のある領域を同定した。また交互作用検定により両者の相関に有意な縦断的変化があるか評価した。【結果】2-back課題の正答率は術後有意に改善した(p < 0.05)。全脳解析では認知機能指標と楔前部のALFFに正の相関、右内側前頭前皮質/前部帯状回、両側眼窩前頭皮質のALFFに負の相関が見られた(多重比較補正後p < 0.05)。右内側前頭前皮質/前部帯状回、両側眼窩前頭皮質におけるALFFと認知機能指標の負の相関は術後有意に低下した(p < 0.05)。【結論】task-positive networkにおけるALFFと認知機能指標には健常者にて正の相関がある事が知られるが、本術前患者では両者の関係は反転しており、認知機能障害の強い患者でtask-positive networkであるfrontoparietal control systemにおける異常な自発的神経活動の上昇およびdefault mode networkでの神経活動低下が示唆された。認知機能障害とtask-positive networkでの相関は術後の認知機能の回復にともなって減弱ないし反転しており、正常化が示唆された。これらは脳脊髄液減少下における機械的圧排/浮力低下に伴う前頭葉底部での異常神経放電が、可逆性認知機能障害の原因となるという仮説を支持するものである。
著者
笈田武範 武藤正人 小林哲生
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【背景・目的】近年,他のモダリティとの融合や小型軽量化などの理由から,超低磁場MRIの研究が注目されている.超低磁場MRIを実現するためには,超伝導量子干渉素子(superconducting quantum interference device : SQUID)や光ポンピング原子磁気センサ(optically pumped atomic magnetometer : OPAM)などを用いて,低周波の微弱磁場を検出する必要がある.OPAMはアルカリ金属蒸気を封入したガラスセルにポンプ光・プローブ光2つのレーザを照射し,光ポンピングされたアルカリ金属原子の電子スピン偏極による磁気光学回転により磁場を計測する.OPAMは,SQUIDでは必須の冷媒が不要であり,維持コストなどの面で利点がある.しかしながら,アルカリ金属原子の電子スピン偏極の磁気回転比は,MRIにおいて主に計測対象となるプロトンの約164倍であるため,同一磁場中に試料およびガラスセルを設置すると,共鳴周波数の不一致により計測感度が低下する.この問題に対して,フラックストランスフォーマ(flux transformer : FT)を用いた遠隔計測法が提案されている.先行研究において,単一FTを用いたMR信号計測では,信号対雑音比(signal-to-noise ratio : SNR)が最大となるコイルのパラメータが存在する一方,その感度に限界があることが報告されている.本研究では,直交位相FTを用いることにより,OPAMを用いた遠隔MR信号計測のSNR向上を目指す.【方法】直交位相FTとして,鞍型コイルペアを入出力コイルとするFTをコイルペアの円筒の軸の回りに90°回転した2組のFTを用いた時の間接MR信号計測について,磁場分布の数値解析および擬似MR信号計測を用いてSNRを評価し,OPAMと直交位相FTを用いた間接MR信号計測の有効性を確認した.【結果・結論】数値解析の結果,直交位相FTを用いることにより単一のFTを用いた場合と比較して,約2倍のSNRが得られることが確認された.また,擬似MR信号計測の結果においてもSNRの向上が確認され,直交位相FTを用いることによりOPAMを用いた遠隔MR信号計測のSNR向上が可能である事が示された.
著者
高倉京子 藤本晃司 木戸晶 伏見育崇 岡田知久 坂下尚孝 木村徳典 富樫かおり
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【背景・目的】ASL(Arterial Spin Labeling)は造影剤を用いない灌流画像取得法であり、非侵襲的で繰り返し撮像が可能である。脳のみならず、腎臓においても様々な定量方法が研究、報告されている。ASLの撮像手法はRFパルスの印加方法によりPASL(pulsed-ASL)とCASL(Continuous-ASL)があり、異なるモデルを用いた定量評価がなされている。ASL画像の信号強度のシミュレーションは行われているが、PASLを用いて得たASL画像のカーブフィッティングを行ったという報告は少ない。今回我々は、前回の本大会で発表した定量評価についての検討を継続し、3D-SSFP-ASL(ASTAR法)の定量評価法として各TI(Inversion Time)におけるASL画像における腎実質の信号強度のカーブフィッティグを行うことによる腎血流量の計測を試みた。【方法】3T MRI装置(東芝メディカルシステムズ社)において、同意の得られた11名の健常ボランティアの撮像を施行。呼吸同期でASL画像を取得。ASLの撮像条件は、TR/TE:4.3/2.2 ms, フリップ角:94-116度, バンド幅:±390 Hz, FOV:36 cm,スライス厚:4 mm, matrix:192×192, SPEEDER Factor:2, 積算回数:2,非選択IR(nSSIR): 2とし、TIを800-2400まで400 ms毎に撮像。また、プロトン密度強調画像を取得。自作Matlabソフトを用い、腎皮質の信号強度を測定し、TI 5点の計測から、single compartment modelに基づいたASL信号強度のカーブフィッティグを行い、ラベルされたスピンが腎臓に到達する時間を考慮したみかけの腎血流量を算出した。【結果】全被検者の平均のみかけの腎血流量は、188.97±47.02[ml/100cc/min]であり、変動係数は25%未満であった。【結論】3D-SSFP-ASL手法による、腎血流量の計測方法としてカーブフィッティグは妥当な方法であると考えられる。
著者
山本洋紀
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

私たちは、刺激と知覚が乖離する時(ないはずの物が見える等)のfMRIによって、視覚意識の脳過程を調べています。本講演では、視覚皮質を対象にした最近の下記研究を紹介し、視覚意識に果たす初期視覚野の役割を考察します。1) ない物が見える:アモーダル補完に関するfMRI1視覚物体の多くは他物体で遮蔽されていますが、人は遮蔽部分を容易に補完し、物体の全体像を即座に把握できます(アモーダル補完)。本研究では、遮蔽物体を見ている際の脳活動をfMRIで計測しました。その結果、V1/2野において、遮蔽されて欠損した視覚像がまるで絵を描くように補完されて、物体の全体像が再構成されていることを明らかにました。さらに、V1の補完に関わる活動は、事前に見ていた物体の形を反映して、補完が必要でないと判断される場合には生じないこともわかりました。人間の視覚系は、外界に対する「解釈」を加えた、より高次の処理を行っていることを示しています。また、視覚皮質の活動は、見えている物体だけでなく、見えなくてもその存在を感じるだけで生じることが確認されました。2) ある物が見えない: 視覚意識の個人差に関するfMRI2左右の目に全く異なる画像が入力されると、知覚は揺らぎ安定しなくなります。この現象は両眼視野闘争(BR)と呼ばれ、視覚入力は一定のまま、主観的な知覚だけが不随意的に切り替わることから、視覚処理に関わる神経活動と視覚意識に関わる神経活動を分離できる現象として、数多くの神経科学的研究の対象となってきました。ところが、BRの脳過程については、まだ十分にはわかっていません。本研究では、BRによって見えなくなった目標刺激によって引き起こされた低次視覚野の脳活動に着目したfMRI実験を行いました。この結果、目標刺激が見えなくなる時間が長い人ほどV3野とV4v野の反応が弱いことがわかりました。この結果は低次視覚野の活動が両眼視野闘争の知覚交替のダイナミクスの決定に関与していること示しています。1. Ban H., et al. (2013) The Journal of Neuroscience, 33(43), 16992-17007.2. Yamashiro H, et al. (2014) Journal of Neurophysiology, 111(6), 1190-202.
著者
町田好男
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

圧縮センシング(Compressed Sensing: 以下CS)とは、「観測対象データがある表現空間では「スパース(疎)」であると仮定して、少数の観測データから対象を復元する手法」である。近年、ランダムな成分を持つ観測マトリクスの場合に復元可能であることが情報理論分野において示され、さらに、観測データをランダムサンプリングできるMRIはCSのよい適用となっていることが示された(Lustig, 2007)。図は、CS-MRIにおける再構成の概要を示したものである。再構成したい画像(対象データ)をmとしよう。CS-MRIでは、「(1)表現空間データΨmが疎であること」と「(2)アンダーサンプルしたフーリエ変換像Fumが観測(収集)データyに近いこと」を条件としてmを求める。(適当なモデルのもとで解を求められることがCS理論の教えるところである。) 通常のMR断面像ではΨとしてWavelet変換などが用いられる。CS-MRIにおいては、観測データ、対象データ、疎表現データの3つを切り分けて考えること、あるいはそれらをうまく割り当てることが重要であるが、この時の自由度が高く従って応用範囲が広いのがMRIの特長となっている。本講演では、原理説明に続きいくつかのアプリケーションを紹介する。また現在我々が検討しているCS画質の評価検討について一部紹介したい。
著者
池上匡 萩原浩明 田山芳史 金野義紀
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【目的】Kanda らの衝撃的な報告により、頻回にわたってガドリニウム(Gd)造影剤を使用された患者の淡蒼球と小脳歯状核にGdが沈着している可能性が示唆された。しかしリニア型とマクロ環型の造影剤では、キレートからのGd遊離量に大きな差があると考えられる。そこでリニア型またはマクロ環型の造影剤を複数回使用された患者で、小脳歯状核のT1高信号化に差があるかどうかを検討した。【対象と方法】2011年7月より2014年3月に頭部造影MR検査を受けた患者258人をスクリーニングして、それより以前を含めて初回の造影検査からリニア型造影剤のみ(Gd-DTPAまたはGd-DTPA-BMA)(リニア群)あるいはマクロ環型造影剤のみ(Gd-DOTA)(DOTA群)を5回以上投与された患者群、それぞれ21人と11人を後ろ向き解析の対象とした。Kanda らの方法に従い、各回のMR検査時の単純T1強調画像の歯状核/橋の信号強度比を測定した。統計解析には初回、5回目、最終回(各群平均8.1回と7.9回)の検査時の信号強度比を用いた。【結果】両群間の年齢、性別、検査期間の平均eGFR、総造影回数には有意差を認めなかった。リニア群ではKandaらの報告の通りに、造影回数が増えるにつれて歯状核信号の上昇を認めたが、DOTA群では信号上昇を認めず、両群間に有意な差を生じた。最終回検査の信号強度比を目的変数として重回帰分析を行うと、年齢、性別、eGFR、総造影回数、原疾患の良悪性、頭部放射線治療の有無、初回から5回目検査までの日数に関わらず、造影剤の種類のみが有意な予知因子であった。【結論】Kandaらの発見した頻回造影患者における小脳歯状核の信号上昇は、リニア型造影剤の使用により起こる現象であり、遊離Gdのはるかに少ないGd-DOTAでは起こりにくいと考えられる。【 開示すべき利益相反はありません】
著者
横沢俊 越智久晃 尾藤良孝 伊藤賢司 佐々木真理
出版者
日本磁気共鳴医学会
雑誌
第42回日本磁気共鳴医学会大会
巻号頁・発行日
2014-09-11

【背景】Diffusion kurtosis imaging (DKI)は,非正規分布の拡散モデルを用いた拡散イメージング手法の一つであり,従来のDTIと比し,軽微な白質・灰白質病変などの検出能向上が期待されている[1].しかし,DKIの解析は,DTIと比較してノイズに対する頑健性が低く,計算アーチファクトが発生しやすい.一般的に,前処理における平滑化フィルターの適用により頑健性は向上するが,画像のblurring発生が課題となる.本研究では,blurringを発生させずに計算アーチファクトを抑制するDKIの解析手法について検討した.【方法】本手法は,制約無しの非線形最小二乗法にて拡散係数と尖度係数を推定し,制約条件の範囲外に算出された係数について平滑化フィルターを適用したデータを用いて再計算する.5名の健常ボランティア(男性,26-45歳)を対象に,1.5 T MRI装置(ECHELON Vega, 日立メディコ)を用いて,MPG 21軸,b値1000, 2500 s/mm2,2NEXのDTIを2回撮像した.解析では,平滑化処理無しの手法,全データに平滑化処理を適用した手法,提案手法の三つの手法にてMK画像を算出した.計算アーチファクトおよびblurringを視覚的に評価し,2回計測の再現性をICC(intraclass correlation coefficient)にて評価した.【結果】提案手法のMK画像は,平滑化処理無しのMK画像と比較して,blurringが同等であるにもかかわらず,2回計測の再現性が有意に高く(ICC: 提案手法, 0.77±0.076; 平滑化処理無し, 0.73±0.079),計算アーチファクトが改善されていた.全データに平滑化処理を適用したMK画像は,平滑化の強度に応じて2回計測の再現性が向上するが,blurringが顕著となった.同等の再現性(ICC: 全データ平滑化, 0.76±0.080)で比較した場合,提案手法のMK画像は,全データを平滑化処理したMK画像と比較して,blurringが小さく計算アーチファクトが改善されていた.【結論】本研究により,DKI解析において頑健性の高い処理が可能であることが明らかとなり,臨床応用実現の可能性が示された.[1]Jensen JH. MRM. 2005;53:1432-40.