著者
Lauer Joe
出版者
広島大学外国語教育研究センター
雑誌
Hiroshima Studies in Language and Language Education (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
no.17, pp.231-238, 2014-03-01

一般の日本人大学生よりも,一般の中国人大学生の方が英語の学習動機が高いのだろうか。英語学習のハングリー精神を養うという点では,日本の英語教育制度よりも中国の英語教育制度の方が良いのだろうか。本論文はこの疑問に答えるべく両国の普通の大学生,すなわち英語専攻でない一般学部生を対象に調査を行った。動機の強さを測る方法にはいろいろあるが,今回は特にすべての大学生が無料でアクセスできる英語学習用ポッドキャストを聴いたことがあるかどうかという指標を調査した。両国の学生は類似点の多い大学に通っており,英語学習年数や学習経験も同程度である。 結果は,複数の視点から観て中国での英語学習におけるハングリー精神の方がむしろ低いかも知れないことが判明した。例えば,21% の非英語専攻の日本人学生は英語学習用ポッドキャストを聴いたことがあるが,本国在住の中国人学生のその使用率は3% に過ぎない。学生だけではなく中国の高校や大学の英語教員もポッドキャストのことをあまり知らないのが実状である。この論文の中では中国の英語教育システムに関するいくつかのほかの事実も指摘されている。Are average Chinese university students more motivated to learn English than average university students in Japan? Is China's English education system doing a better job of motivating students than the Japanese system? This research aims to answer these questions by testing if non-English-major first- and second-year university students in China - i.e., "average college underclassmen"- listen to English-learning podcasts more than their counterparts in Japan. Two hundred twenty-four students in Japan and 184 students in China were given identical surveys in their native languages, asking about their podcast listening habits. The students were enrolled at similar-type universities, and had had similar English-learning backgrounds. It was found that 21% of non-English major students in Japan had at some time listened to at least one English-learning podcast, but only 3% of their Chinese counterparts had done so. This implies that most English teachers in Chinese high schools and even colleges probably do not know much about English podcasts. Other interesting phenomena about the English education system in China are also noted.
著者
Takita Fuyuko
出版者
広島大学外国語教育研究センター
雑誌
Hiroshima Studies in Language and Language Education (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
no.17, pp.205-229, 2014-03-01

本論文の目的は3つあり,(1)日本において,文化的・言語的背景が異なる話者が,主として英語でミーティングを行う際の,彼らの力関係と相互作用における優位性の認識を比較すること,(2)それらの話者の力関係に関する認識が,どの程度共有され対立しているかを明らかにすること,(3)各話者がインタビューの中で,いかに彼らの文化的・職業的アイデンティティーの文化変容と構築を行うかを検討することである。6ケ月の間隔をおいて2回のインタビューを6名の職業人話者に対して個別に実施した。参加者は,アメリカ人シニア科学者2名,台湾系アメリカ人ジュニア科学者1名,日本人シニア科学者1名,そして日本人ジュニア科学者2名である。補充データは3回のミーティングを民族誌学的な視点から観察したものを使用した。調査結果から,アメリカ人シニア科学者,ジュニア科学者の両方とも,力関係は知識と経験に起因すると捉えていることが示唆された。そして、これらの要因を地位や言語運用能力ではなく,ミーティングにおける相互作用の優位性に帰した。一方,これとは対照的に,3名の日本人シニア科学者・ジュニア科学者は、彼らのL2(第二言語:英語)の使用という状況が,ミーティングに存分に参加する能力を制限したと報告した。さらに,日本人科学者たちの認識は,自身の世代,経験とL2能力に応じて異なった。多様な背景を持つ話者間の相互作用における力関係を検証することは,我々に,このような認識の違いに気づかせるとともに,異文化間の相互作用で生ずる可能性のある誤解に対処する一助となる。
著者
Harting Axel
出版者
広島大学外国語教育研究センター
雑誌
Hiroshima Studies in Language and Language Education (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
no.21, pp.187-198, 2018-03-01

本稿は,大学における初修外国語としてのドイツ語授業において,SNSをどのように取り入れることができるかについて考察するものである。筆者が担当するドイツ語授業(CFER level A2)を受講している学生のうち9名が,このプロジェクトに自発的に参加した。プロジェクトに参加した学生には,毎週,オンラインコミュニケーションでよく使われる発話行動を引き出すためのタスクが与えられた。学生はこのプロジェクトのために作成されたフェイスブックグループのタイムラインに自分の日常を投稿し,お互いの投稿にコメントをつけることが求められた。学習者が発話行動時にどのような問題に直面するかについて明らかにするために,タイムラインの投稿を質的・量的な面から検討した。そこでは,タスクごとに行われた発話の頻度,正確性および適切性を判断した。結果としては,このプロジェクトのために開発したタスクが非常に多くの発話行動を引き出すのに適切であること,発話のタイプ,頻度,適切性がタスクによって異なることが示された。また,学生はタスクに取り組む際,授業中に実施した事前の準備活動で使用した表現を多く活用していた。さらに明らかになったことは,タスク遂行の難しさは学生のL2における社会語用論的知識の不足だけでなく,SNSの使い方に慣れていないことにも起因しているということである。プロジェクト終了後のアンケート結果から,学生が外国語学習のツールとしてSNSを使用するのは良いと感じていること,このプロジェクトを通じてドイツ語の発話行動や知識を延ばすことができたと感じていることがわかった。