著者
宇田 萌美
出版者
オオサカ ダイガク ダイガクイン ブンガク ケンキュウカ シャカイ ゲンゴガク ケンキュウシツ
雑誌
阪大社会言語学研究ノート
巻号頁・発行日
vol.15, pp.1-21, 2017-11 (Released:2017-11-00)

社会言語学 本研究では、母方言・移住先方言・標準語の三つのスタイルの間のスタイルシフトの実態を探ることを目的とする。現在静岡県浜松市に居住する、移住経験のある一人のインフォーマントKを対象に、親しい人物との談話を収録・分析し、言語項目ごとの切換えの状況を手がかりに、Kのスタイルシフトの実態を明らかにした。具体的には、本研究で用いる用語の定義と、スタイルシフトに関する先行研究について整理したあと、Kの言語使用意識の調査結果と実態調査の概要をまとめた。続いて、言語項目ごとの切換えの状況から、スタイルシフトの実態とその要因について分析した。その結果、Kは基本的に相手の使用する形式に合わせて自分の使用する形式を切換えていることがわかった。一方で、浜松方言を話すべきというわきまえが同時に働き、相手があまり使わない形式をKが使用することがあることなども指摘した。最後に、Kの言語使用意識と実態を照らし合わせ、各スタイルがKの頭の中にどのようにストックされているかについて考察し、モデル化した。