著者
島地 岩根 Shimaji Iwane
出版者
三重大学生物資源学部附属演習林
雑誌
三重大学生物資源学部演習林報告 = Bulletin of the Mie University Forests (ISSN:09168974)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.9-40, 1996-03-01

ライト・トラップ法により、三重大学平倉演習林における鞘翅類の動態を25年間(1966年~1990年)にわたり調査した。その資料に基づき鞘翅類群集の基本的構成とその動態について解析した。1. 25年間に97科, 603,609頭が記録された。このうち同定できた707種, 544,109頭を対象として検討した。年間に出現した種数は344種~415種、年間の同定個体数は15,420頭~27,754頭にわたった。2. 全体として47種が優先種として出現したが、年間の優占種は9種~26種で構成され、これらが各年における鞘翅類群集の主要構成種であることを明らかにした。また、各優占種の25年間における出現状況から、鞘翅類群集は3種を共通の基盤として、これに、時期により連続的に出現した種、散発的または単発的に出現した種が加わって構成されており、その構成は年ごとに異なることを示した。これは、各優占種の個体数の年次的な変動によるものと考えられた。3. 優占主47種は、これらの個体数の年次的動向の上から、横ばい傾向群16種、増加傾向群4種、減少傾向群14種、漸発傾向群13種に類別された。このうち、横ばい傾向群16種は、鞘翅類群集の25年間における構成基盤であること、他の傾向群に属する各優占種の個体数の増加期と、これらの優占種としての出現状況(優占期)が大体同調した時期は、鞘翅類群集の経年的な動向を反映すると思われた。4. 優占種47種の出現状況、それらの個体数の年次的動向および食性の上から、平倉演習林の鞘翅類群集は、横ばい傾向群16種を共通の基盤として構成されているが、他の傾向群の個体数の年次的な動向と関連して群集構成は時期により異なること、その時期的構成は3~7年の間隔で変動していることが推定された。さらに、その時期的構成は、1966~1971年(6年間)が生態的に最も多様で、1988年~1990年(3年間)が生態的に最も単純であることが推察された。