著者
中村 英記 山本 ゆかり 竹口 諒 堀井 百祐 真鍋 博美 平野 至規 北村 晋逸 室野 晃一
出版者
名寄市立総合病院
雑誌
名寄市立病院医誌 = The Jounal of Nayoro City Hospital (ISSN:13402749)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.1-4, 2015-07-01

名寄市立総合病院の位置する北海道上川北部地区は, 福井県とほぼ同規模の広大な面積に人口約7 万人が居住する2次医療圏であり, 全国有数の過疎地域である. 当地区では近年, 周産期医療の集約化が進められ, 平成16年以降, 分娩可能施設は当院のみとなっている。過疎地域における周産期医療の集約化は, 限られた医療資源を有効利用する上で必要な方策であるが, 遠距離分娩の 加など新たな問題も生じている。また, 当院にはこれまで新生児集中治療室(NICU) がなく, 早産児や重症児は, 2次医療圏こえて旭川市の周産期センター病院に母体・新生児搬送するケースが多かった。 しかし, 急性期の長距離搬送にはリスクを伴う。 また, 搬送先の周産期センタ病院で超低出生体重児が出生したような場合, 急性期を過ぎてもback-transfer(逆搬送) による転院受け入れが当院では困難であったため, 場合によっては数か月にわたり長期間の家族との分離を余儀なくされ, その後の良好な母子関係の確立が阻害されることもあった。 平成24年7月, 地域の周産期医療の充実を図るため, 当院では3床のNICU(加算2) を開設し,人工呼吸管理が常時施行できる体制とした。 具体的には,切迫早産時の母体搬送基準を緩和し, 加えて慢性期の新生児逆搬送を積極的に受け入れるようにした(表1)。現行の基準としてから2年が経過したが, 実際に母体搬送数や新生児搬送数は減少しているのか, また早産児・重症児の入院を受け入れるようになったことで予後が悪化しているところである。今回われわれは、NICU開設後、当院における周産期医療がどのように変化したか、検討したので報告する。