- 著者
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近仁齋薪翁 撰
- 出版者
- 大坂屋久五郎
- 巻号頁・発行日
- 1772
劇書。上下2冊。近仁斎薪翁著。(江戸本材木町)大坂屋久五郎・(四日市広小路)竹川藤助刊。明和9年(1772)1月刊。上方(とくに京都)の歌舞伎役者の芸談を中心とする『役者論語』に対して、江戸の役者評、芸談を打ち出したところに特色がある。序文には、初代澤村宗十郎の十七回忌にあたることが記され、それを契機に起草されたものと推測される。また凡例には、のちに『役者論語』に収められる『耳塵集』が元禄時代の役者の談話であるのに対して、本書は享保以降の古人を集めたとする。上の巻は「極位の細評」「名人の極」「所作事仕内の極」「当時評判記江戸見物の変化」「かな手本忠臣蔵由来ならびに大星由良之助評判」からなり、評判のありかたを説く。下の巻は「古人作者口伝」「古人役者芸咄」「花実五十相伝」の3項からなり秘書的な性格を持ち、具体的な芸談に資料的価値が高い。日本思想大系『近世芸道論』(岩波書店、1972年)に本書を底本とした翻刻がある。(児玉竜一)(2017.2)