著者
加藤 林太郎 浅川 翔子 山元 一晃
出版者
日本国際看護学会
雑誌
日本国際看護学会誌 (ISSN:24341444)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.23-34, 2021-03-01 (Released:2022-10-01)
参考文献数
11

目的:外国人看護師の受け入れや教育についての議論は、2008年に経済連携協定に基づいて始まった外国人看護師の受け入れを主軸として展開され、多くの知見が蓄積されている。だがその一方で、看護教育課程を持つ大学に在籍し、日本で看護師国家試験合格を目指す留学生(以下、看護留学生)については、その学びの過程に寄り添った教育や教材についての研究が未だ少ない。そのため、看護留学生が実際にどのような困難を抱えながら講義や実習などに臨んでいるのかは、分からない部分が多い。また、看護留学生への教育研究や教材開発には、そこに携わる教員の視点も欠かすことができない。そこで本研究では、特に困難が予測されるライティング教材の開発を見据え、授業、演習、実習などで看護留学生が困難と感じていると思われる事象を、看護教員へのインタビューの分析を通じて明らかにすることを目的とする。 方法:実際に大学の看護学部において留学生の教育に当たっている看護教員4名を対象にしたインタビューを、日本語教員がインタビュアーとなり行った。そして、そこで看護教員が看護留学生に対する教育において困難だと感じる点について語った発話を抜き出し、Steps for Coding and Theorization (SCAT)の手法で分析した。 結果:まず、インタビュー内の発話から延べ78の構成概念を抽出し、それを基にストーリーラインを作成した。その結果、「留学生に見られる問題点」「看護教育の特徴に起因する問題点」「教育制度・環境面の問題点」「看護教員自身の問題点」の四つの視点からストーリーラインが作成された。そして、それぞれを細分化することにより、看護教員が捉える看護留学生への教育上の困難点に関わる24の仮説を導くことができた。その仮説は、看護留学生向けライティング教材作成の有用性を示すものであった。また、教材の内容についても、ライティングの周辺的能力を取り入れる有用性が示唆された。そして、看護教員と日本語教員が協働で看護留学生の学びを支える重要さも示されていた。