著者
上田 景子 金子 周平 水海 吉太郎 田中 研実 近藤 隆一郎
出版者
福岡県農林業総合試験場
巻号頁・発行日
no.1, pp.49-54, 2015 (Released:2020-02-03)

果樹園から排出されるカキノキ(Diospyros kaki)剪定枝の新たな処理方法を開発するため,剪定枝チップを培地の基材としたヒラタケ(Pleurotus ostreatus)の無殺菌栽培を検討した。無殺菌の剪定枝チップにヒラタケ種菌を混合して温湿度無管理で培養を行った後,プランターに埋設する手法とした。本手法では,チップだけでも子実体は発生し,2.5kgの菌床あたり積算収穫量が355g,収穫回数は3.0回だった。栄養材として米ヌカを添加することで,それぞれ1035gおよび6.0回に増大した。種菌量の違い(培地全体重量の10%,20%および40%)で積算収穫量に有意な差はなかった。子実体が形成生育する場所,すなわち発生場所としては,クヌギ林内で積算収穫量および収穫回数がそれぞれ679g/菌床および5.4回と建物の軒下よりも多かった。プランター内の剪定枝は収穫開始から約1年後には原型をとどめない程度まで形状が崩壊していた。以上のことから,チップ化したカキノキ剪定枝を培地としたヒラタケ無殺菌栽培は,柿農家が特別な施設なしに剪定枝を処理できる方法として期待されるとともに,収穫した子実体も収入源にできる有効な技術と考えられた。
著者
菊原 賢次
出版者
福岡県農林業総合試験場
巻号頁・発行日
pp.5-10, 2019 (Released:2020-02-03)

福岡県では2014年以降,Pseudononas syringae pv. actinidiae biovar3(Psa3)によるキウイフルーツかいよう病の被害が拡大している。Psa3に汚染された花粉は感染を拡大させる可能性があるため,人工授粉には健全花粉を使用しなければならない。汚染花粉からのPsa3の検出方法は「キウイフルーツかいよう病Psa3系統の防除対策マニュアル」に記載されているが,1サンプルごとに高価な専用機器で集菌してからPCR法で検出するため,時間と労力がかかり,大量検定には不向きである。一方,花粉から直接DNAを抽出し,PCR法で検出する方法が報告されているが,検出限界は明らかではない。本研究は花粉から直接DNAを抽出し,防除マニュアルに記載されたプライマーを用いたPCR法により,Psa3が3×10 4cfu/g含まれる人工汚染花粉から検出が可能であった。次に,開発手法を中心として用い,2016年に福岡県の36圃場で生産された花粉の汚染状況を調査した結果,本病発生圃場の雄木から採取されたすべての花粉からPsa3が検出された。また,発生圃場に隣接した未発生圃場の雄木から採取した花粉からもPsa3が検出された。一方,無発生地区で生産された花粉からPsa3は検出されなかった。このことから,発生地区では健全花粉の生産は困難であることが示唆され,授粉に使用する花粉は少なくとも,無発生地区での生産が必要と考えられた。