- 著者
-
菊原 賢次
- 出版者
- 福岡県農林業総合試験場
- 巻号頁・発行日
- pp.5-10, 2019 (Released:2020-02-03)
福岡県では2014年以降,Pseudononas syringae pv. actinidiae biovar3(Psa3)によるキウイフルーツかいよう病の被害が拡大している。Psa3に汚染された花粉は感染を拡大させる可能性があるため,人工授粉には健全花粉を使用しなければならない。汚染花粉からのPsa3の検出方法は「キウイフルーツかいよう病Psa3系統の防除対策マニュアル」に記載されているが,1サンプルごとに高価な専用機器で集菌してからPCR法で検出するため,時間と労力がかかり,大量検定には不向きである。一方,花粉から直接DNAを抽出し,PCR法で検出する方法が報告されているが,検出限界は明らかではない。本研究は花粉から直接DNAを抽出し,防除マニュアルに記載されたプライマーを用いたPCR法により,Psa3が3×10 4cfu/g含まれる人工汚染花粉から検出が可能であった。次に,開発手法を中心として用い,2016年に福岡県の36圃場で生産された花粉の汚染状況を調査した結果,本病発生圃場の雄木から採取されたすべての花粉からPsa3が検出された。また,発生圃場に隣接した未発生圃場の雄木から採取した花粉からもPsa3が検出された。一方,無発生地区で生産された花粉からPsa3は検出されなかった。このことから,発生地区では健全花粉の生産は困難であることが示唆され,授粉に使用する花粉は少なくとも,無発生地区での生産が必要と考えられた。