著者
吉岡 照高
出版者
農研機構果樹茶業研究部門
巻号頁・発行日
no.1, pp.37-45, 2017 (Released:2019-01-22)

1. カンキツ口之津39号は1974年に晩生のマンダリン‘アンコール’に早生温州‘興津早生’を交雑して育成され,個体番号はEnOW-2である。2001年よりカンキツ第9回系統適応性・特性検定試験にカンキツ口之津39号として供試された。その結果,普及性が低いと判断され,2009年をもって試験中止となった。2. 育成地の調査では,樹姿は直立性で樹勢は中程度で,刺の発生はほとんどない。葉の大きさは‘興津早生’や‘アンコール’より大きい。花弁は白色,5枚で,葯退化により花粉を形成しない。3. 果実の形は扁平で,‘アンコール’に似てへそを形成することがある。果実の重さは110g程度,果皮は濃橙色で比較的滑らかである。果汁の糖度は12月上旬で,11.1%,酸含量は0.85g/100mlで,成熟期は1月と考えられる。種子はほとんどなく,多胚性である。4. 系統適応性検定試験の評価では,果実は125g程度で,果皮の厚さは平均2.0mmで,剥皮性は比較的良い。また,じょうのう膜の硬さは比較的軟かく,肉質は硬い傾向である。果実の成熟期は1月中下旬とする試験地が多く,糖度は平均12.9%,酸含量は1.00g/100mlとなる。浮皮の発生はほとんどないが,一部の試験地で裂果の発生が多くみられた。年によりかいよう病がみられる。果肉がやや硬く,特徴的な食感をもつが,裂果の発生および収量性が高くないという理由から試験中止が妥当と判断された。