著者
久末 弥生
出版者
都市経営研究会
雑誌
都市経営研究 (ISSN:24363146)
巻号頁・発行日
no.1, pp.1-19, 2021-03

現代社会における都市のイメージは、19世紀に始まる都市化の時代を牽引したフランスの首都パリ、とりわけ19世紀後半から急速な都市化を実現したパリ第9区に、その原点を見いだすことができる。19世紀のパリにおける猛烈な人口増加を背景に、金融、不動産取引、商業、娯楽といった近代都市に不可欠な領域と、文化、芸術というフランスのアイデンティティーを支える領域のいずれにおいても、世界の中心地として繁栄したパリ第9区は、都市化の1つの到達点を早期に示したエリアでもあった。19世紀後半に本格化した都市化の時代すなわち人口の大都市集中の時代から約150年を経た今、2020年に生きる我々は新たな段階を迎える転換期に立っている。本稿では、都市化の時代を象徴するパリ第9区に着眼し、現代まで継承されてきた都市のイメージを概観すると共に、新たな都市の展望を探る。