著者
武内 克憲 上田 哲之
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR VASCULAR SURGERY
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.793-796, 2011

馬蹄腎を伴う腹部大動脈瘤(AAA)手術の際に,異所性腎動脈(ARA)の再建法が問題となるが,われわれは腹部4分枝人工血管を用いたARA再建人工血管置換術を経験したので報告する.症例は48歳,男性.術前腹部CTにて腎動脈下に最大径50 mmのAAAと馬蹄腎,さらに左右腎動脈以外に大動脈瘤から分岐するARAを認めた.手術は腹部正中切開開腹でアプローチし,AAAを切開し動脈瘤前壁と馬蹄腎峡部をあわせて牽引し視野を確保した.4分枝人工血管で中枢を吻合後,まずARAを7 mmの分枝で再建した.末梢側左脚2本をそれぞれ内外腸骨動脈,右脚は総腸骨動脈に分枝を端々吻合した.術後経過は良好で腎機能低下は認めず,術後造影CTではARAは開存していた.馬蹄腎は分節的な血管支配を受けているため,ARAの再建は可及的に行い部分的な梗塞を避ける必要があり,4分枝人工血管を用いたARAの再建は有用と思われた.