著者
新井 凜子
出版者
Japan-China Sociological Society
雑誌
21世紀東アジア社会学 (ISSN:18830862)
巻号頁・発行日
vol.2023, no.12, pp.58-75, 2023-03-01 (Released:2023-03-03)
参考文献数
90

本稿は、中華人民共和国における「ネーション」の概念の変遷を、日本との比較を通じて明らかとし、また「民族」の比較可能性を模索することを目的とする。「中華民族」の概念は、中国近代国家建設の過程において形成され、また再定義されてきた。中華民族の概念は実際の政策、特に少数民族地域での政策に影響を及ぼしており、これは言語教育において特に顕著である。本稿では、主に文献調査に基づいて、中華人民共和国成立後の新疆ウイグル自治区における漢語教育と、明治時代から第二次世界大戦中までの沖縄における国語教育を比較し、中華民族概念の変化に関する経験的証拠を示す。日本の国家建設においては日本人の共通性が強調されたのに対し、中国ではまずその差異が強調された。「民族」の日中比較を通して、特に2000年以降、中華民族の共通性へと重点がシフトしたこととその本質が明らかとなる。