著者
藤澤 宏幸
出版者
Miyagi Chapter of Japanese Physical Therapy Association
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.8-13, 2023 (Released:2023-05-01)
参考文献数
35

理学療法は,疾病治療とリハビリテーション医療における社会復帰支援のための動作の再建を通して,国民の健康・福祉に貢献している。その成熟を図るためには,哲学・倫理レベル,パラダイム・理論レベル,実践レベルの各階層で議論が必要である。臨床に直結する実践レベルにおいては,臨床研究が進められているものの,パラダイム・理論レベルにおいては議論が十分とはいえない。その意味で,理学療法モデルの構築が課題としてあるが,2000年に国際障害分類試案から国際生活機能分類へ移行した際に,理学療法の治療モデルとしていた機能障害-能力低下-社会的不利の因果モデルは臨床では用いられなくなった。国際生活機能分類における生活機能モデルは専門職間の共通言語としては有用と考えられるが,それに連結できる理学療法モデルが必要であり,その一つに行動制約モデルがある。行動制約モデルは運動行動の階層性に基づいたものであり,行為を射程に入れた動作の再建という意味では有用であるが,疾病治療のためのモデルとしては不足しているところがある。そこで,本論では,理学療法を考えるうえでの疾病の捉え方を,病因,病理,機能不全・機能障害の循環的な関係性によって整理し,疾病治療における理学療法モデルの位置づけを検討する。