著者
鈴木 猛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.212-214, 1951-11-15

長い間進歩が停滯していた殺虫剤の領域も第二次大戰を契機に,DDT,BHCのように微量で卓效ある有機合成剤があらわれ,一時は,昆虫と人間の闘爭も終末に近づいたかの觀があつた。しかし出現當時オールマイティのように思われたDDTも,その後の廣範綿密な實験によれば,ある種の害虫には效果が必ずしも十分でなく,又昆虫のDDTに對する抵抗性獲得という問題も最近漸くとりあげられてきている。一方,更に新しくChlordane,Aldrin,Dieldain TEPP,Parathionなど,鹽素,燐,硫黄を含む新有機殺虫剤が次々と發見され,まだまだ今後に意想外の強力な藥剤が見出されないとはいえない。しかし現在では,DDT,BHCは依然として衞生殺虫剤の中心をなすものであり,その長所短所を知つて,これを適切に應用することは,衞生害虫防除の上から甚だ重要なことであろう。 DDT,BHCは何れも白色結晶状の有機鹽素化合物であり,昆虫には喰毒と接觸毒の兩方の作用を持つている。その外BHCは蒸氣壓がかなり大きいため,呼吸毒としても作用するようである。

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