著者
井上 義郷
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.395-400, 1964-07-15

ゴキブリの駆除法の一つとして,蒸したジャガイモに,硼酸を混ぜたものを毒餌として適用する方法が一般に広く知られている事実から,ゴキブリの駆除は,個々にはかなり古くから行なわれている事が想像されるが,しばらくの間はその技術的な進展は,全国的に大きくとりあげられたハエ蚊駆除運動のかげにかくれていて,殆んどみられなかった。しかし,その間にあっても,新たな合成殺虫剤の登場に伴ない,近代的な駆除技術の検討は,実験的にすでに実地に進められていたわけであり,たまたまそれが大きく一般にとりあげられるようになったのは,最近のポリオの流行時からと云ってもよいであろう。ゴキブリの疫学的な意義はひとまずおくとしても,当時,ハエと全く同じ意味で不潔な害虫として,その駆除が行政的にも考慮された事がきっかけとなり,一方では,ちょうどそれに答える駆除技術が或る程度完成をみていた事も幸して,ゴキブリの駆除は急速に進展したと云う事が出来よう。 このように,ゴキブリの駆除が俄かに注目されるようになった為か,現在一般に行なわれている駆除法には,まず目につく彼等を追廻し,それらを叩きつぶしたり取り抑えたり,或いは走り廻る彼等をめがけて殺虫剤をふりかけたりする,至って素朴な段階から,蒸したジャガイモに硼酸を混ぜたものや殺虫剤の毒餌を適用する方法とか,くん煙,煙霧や局所重点残留処理法など,技術的にはより高度なものまで,いろいろな段階がみられるわけである。

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