- 著者
-
平山 恵造
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.291, 1976-03-01
末梢性顔面神経麻痺に伴つてみられる現象で,麻痺の直後からみられる場合もあるといわれるが,普通数週ないし数カ月おくれてみられるものが多い。患者が食事をはじめると顔面麻痺の側の眼から流涙が起こり,食事が終わると止む。流涙は上床覚の刺激が重要であつて,咀嚼運動のみでも,また舌などに機械的刺激を与えても起こらない。そして,感情的に泣くときには,むしろ流涙が起こらない。 鑑別上注意しなくてはならない流涙がある。すなわち,末梢性顔而神経麻痺では眼輪筋の涙管部にあるHorner筋も麻痺するために,涙管腔がつぶれて,自然の涙が鼻腔へ流れるのが妨げられて,目に涙が多く溜り,これがときとして顔面に流れ出る程のことがある。これは食事や,味覚に関係なく,空涙症候群では発作的な流涙であることが特徴的で,容易に区別されよう。