- 著者
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脇本 博
青野 敏博
松本 圭史
高安 進
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.421-424, 1983-06-10
睾丸性女性化症は性染色体がXYで,腹腔内に睾丸を有し,外性器は女性型を呈する。思春期には正常女性と同様に乳房の発育がみられ,男性化徴候は出現しない。腋毛,陰毛はほとんど認められない。このような睾丸性女性化症の症状は,胎生期または思春期に男性ホルモン作用が発現されていないことを示唆する。本症の病因として,1)睾丸における男性ホルモン分泌能の低下,2)男性ホルモンに対する標的器官の感受性の低下の2つが考えられるが,本症の患者睾丸のテストステロン合成能は正常男子と同様良好であることが明らかにされた1)。そこで標的器官のホルモン感受性の低下が本症の病因として重要視されるようになった。近年,Bullock2),Griffin3)らの研究により,本症の男性ホルモン不応は男性ホルモンレセプターの欠損に起因するものであることが証明された。したがって,睾丸性女性化症の確定診断には,アンドロゲンレセプターの検索が不可欠と考えられる。しかし,実地臨床の場でアンドロゲンレセプターの測定が,本症の鑑別診断に利用されたという報告は未だ見られない。我々は正常のヒト皮膚由来培養線維芽細胞中における5α-dihydrotcstosterone(DHT)に対するレセプターをデキストランーチャーコール法によって検索し,その最大結合部位数(B max)ならびに解離恒数(Kd)をScatchard分析によって求め,その正常値を決定した4)。同様に睾丸性女性化症および外性器異常を伴う内分泌異常疾患,染色体異常疾患を有する患者の皮膚由来培養線維芽細胞中のDHTレセプターを検索し,正常値と比較対照することにより睾丸性女性化症の診断に本検査法を応用した。本稿では,睾丸性女性化症の病像を解説した後,本検査法の実際的な使用例について報告したい。