著者
神前 あい
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.72-74, 2020-10-30

治療法の概要 甲状腺眼症は,甲状腺自己抗体による自己免疫性炎症性疾患で,外眼筋,涙腺,脂肪織に炎症性の腫大が起こる。そのために,複視,眼瞼腫脹,眼球突出などの眼症状が出現する。主に甲状腺機能亢進症のBasedow病に併発するが,甲状腺機能が正常のBasedow病(euthyroid Graves' disease)や橋本病でも甲状腺自己抗体が陽性であれば,眼症状が出現することがある。Basedow病などの甲状腺疾患の発症前後3か月〜1年以内に眼症状が発症することが多いが,アイソトープ治療後や甲状腺全摘出後であっても自己抗体が上昇する症例では眼症状が出現する可能性があり,眼科での精査加療が必要になる。眼症状が軽症の場合は経過観察となるが,中等症以上の眼症状が出現した場合は,基礎疾患の治療と並行して,眼症状の治療が必要になる。 球後に炎症のある活動期の治療としてステロイドパルス治療があり,投与方法としてはソル・メドロール® 500mg×3日を3クール投与するdaily法と,週に1回500mg×6回+250mg×6回投与するweekly法が行われている。甲状腺自己抗体のうち,甲状腺刺激抗体(TSAb)が最も眼症状と相関するので1),TSAbの推移に留意しながら経過をみる必要がある。球後病変の精査はMRIにて行うことが望ましい(図1)。T1強調画像による外眼筋肥大や脂肪織の腫大と併せて,脂肪抑制のT2強調画像を撮影することで外眼筋の炎症を評価できるため,活動期や治療効果の判定が容易となる。

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