- 著者
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高橋 剛
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.52-54, 2008-04-05
1 診療の概要
亀頭包皮炎は,亀頭の包皮内板・外板に挟まれたスペースに起こる限局性の感染症である。このスペースには幼児期に恥垢がよく貯まるので,それが原因と思われがちであるが,これは誤りである。恥垢は閉鎖スペースに皮膚が脱落して発生するものであって,外部からの感染は防護されている状態といえる。恥垢そのものは表皮角化の脱落によるケラチン質の集塊であって,これ自体が感染の基になることはない(図1)。ときには恥垢が小豆大になって外から透見できることがあり,小児科医から脂肪腫の疑いとして紹介されてくることもある。年長になるに従って包皮外板と内板の癒着が取れてスペースが外界と通じるようになると,雑菌の繁殖を許すようになる。また排尿後に尿が流入して尿中成分が沈着するようにもなる。
このようなときにバルーニングがあると(図2),増悪因子とされて小児科医から包茎手術の要請をしばしば受けるが,後述するように重大に取る必要はない。また包皮を無理にめくったりすると内外板の癒着が外力によってはがされ,発赤,浮腫をきたし感染を受けやすくなる。いずれにしても外界と接するような状態になったとき,包皮内外の衛生状態が悪く清潔が保たれなかったり抵抗力が弱まっていると,容易に炎症の母地となり菌が繁殖し,包皮,亀頭のびらんをきたし,膿を排出するようになる。このとき恥垢は液状化し,膿の一部となって排出される。炎症が強い場合は陰茎全体が赤く腫れ,ソーセージ様になることもあるが,これはあくまでも反応性の皮膚発赤であって病巣は先端部のみである。