著者
河野 兼久
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1221-1222, 2019-12-10

平成から令和に改元される記念すべき年となった2019年の3月末をもって,愛媛県立中央病院を定年退職し,41年にわたる脳神経外科手術医の人生に区切りを迎えました.振り返ってみると,多くの先達が言われてきたように,思いのほか巧く行えた症例よりも難渋したことのほうがより濃く鮮明に思い出せます. 私が脳神経外科専門医を取得した1985年頃には,日経メディカルに「苦いカルテ」という連載があり,名だたる先輩・名医の先生方が,若いときの教訓的な実臨床での苦い経験を赤裸々に記載されており,私はもとより多くの若い医師たちに「他山の石」として愛読されていました.スポーツ選手が負けてから大きく成長すると言われるように,臨床現場でも失敗から学ぶことの大事さは,良医たるに必然の文化とも言えるもので,事の重大さから仔細は表沙汰にできない内容もあり,個人が秘めて自戒し,患者診療に反映させることで免責を得たように自己処理しているのが実情かと推察します.

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