著者
真壁 寿
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.435, 2005-05-01

19世紀の後半に活躍したイギリスのWilliam R. Gowers(1845年~1915年)が筋ジストロフィーの特徴的な床からの立ち上がりを図入りで詳細に記載している(図)1).彼の名にちなんでこの特徴的な立ち上がりをガワーズ徴候(Gowers'sign)と呼ぶ.この徴候は手で膝を押しながら大腿を除々によじ登り立ち上がることから別名登攀性起立とも呼ばれる.筋ジストロフィーだけでなく,筋炎やKugelberg-Welander病のような筋原性疾患でも認められる2).Duchenne型筋ジストロフィーでは,5ないし6歳頃から8歳位までに認められる徴候である. Gowersは医学生時代,常にトップの優秀な医学生で,大変な博識家であったと伝えられている.また彼は有名な植物学者でもあったし,絵も描き,文学もこなしたという.19世紀におけるLeonardo da Vinciのような天才であった.彼は医学生時代から筋ジストロフィーに興味を持ち,1879年に著書を著し,その臨床的特徴を詳細に記載している.この徴候は,1868年にフランス人医師のDuchenneによって最初に述べられていたが,Gowersの精密な絵があまりにもその特徴を表しているため,ガワーズ徴候という呼び名が後世に残ったとされている3).

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