著者
戸田山 和久
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.588-594, 2016-08-25

ロジカル界の不思議 一時期ほどでもなくなったように思うが,「ロジカルにシンクしようぜ」「論理的に書こうぜ」という掛け声はまだまだ喧しい。そして,汗牛充棟とは言わないまでも,「論理的思考ノウハウでウハウハ」系の本はいまでも書店のビジネス本コーナーの重要な一角を占めている。 こんな具合に巷には,論理的に思考し,話し,文章を書くにはどうしたらよいのか教えて進ぜようという言説が溢れかえっている。しかし,不思議なのは,「どうしたら論理的にほにゃららできるのか」を問う前に答えておかねばならないはずのもっと重要な問題,つまり,「なぜわれわれは論理的にほにゃららしなければならないのか」,あるいは,これと重なるけれども「どういうときにわれわれは論理的にほにゃららすべきなのか」,という問いに,明確な答えが示されたためしはないということだ。それどころか,これらの問いそのものが明示的に問われることも滅多にない。これを問い始めると,いずれ「論理的とはどういうことか」に答えなければならなくなってしまうからだろう。

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