- 著者
-
安井 はるみ
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.18-24, 2006-01-10
いま,なぜクリニカルVEなのか
医療費総額が31兆円を超え,医療制度改革のなかでも医療費削減は大きな課題であり,厚生労働省が2005(平成17)年6月に実施した第15回医療経済実態調査の結果速報報告では,一般病院の赤字傾向は続いている1)。いま,看護管理者や施設管理者には,医療におけるコストを,「収入」「支出」,そして「アウトカム(結果)」としてどのようにとらえ,どんな戦略を立て戦術をどう展開するのかが問われる時代に突入している。病院や施設の存続のためには,患者や家族,地域社会,自施設に従事している医療従事者が期待している満足度向上,経営面での適切な費用対効果,新たなサービスによる他施設との差別化による収入増など,課題は山積している。
昨今の医療界の傾向として,在院日数短縮化などによる効率性重視型の「コストカット」が経営陣から迫られる一方で,継続的な質改善,質管理,質保証などを実施してきた。いずれもこれまで看護管理者が医療現場でのマネジメントを効果的に展開するために取り組んできたことであるが,新人看護職員の離職率増,患者高齢化に伴う療養上の世話の増加などにより,医療現場がかかえる課題はますます膨張し,そこで働く者にとっては疲弊感を感じざるを得ない。さらに,患者中心の質の高い医療や看護を提供することが本来の目的であるにもかかわらず,コスト削減・医療事故防止活動などに追われ,日々の業務のなかで,患者中心とは,看護の目的とは,自分自身のマネジメントのめざすものとは何なのかをじっくり考える暇もなく,目の前の業務をこなすことに忙殺されていると感じているのは筆者だけではないのではないだろうか。