- 著者
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下司 信夫
中野 俊
- 出版者
- 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
- 雑誌
- 地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
- 巻号頁・発行日
- vol.58, no.3-4, pp.105-116, 2007-08-31 (Released:2014-05-22)
- 参考文献数
- 17
- 被引用文献数
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口之島火山は琉球弧火山フロント上に成長した安山岩質の複成火山であり,0.3 Ma以降少なくとも 10 個の角閃石安山岩質溶岩ドームが輝石安山岩質の火山体の上に成長している.軽石流堆積物からなる大勝火砕流堆積物は約 4 万年前ごろにウエウラ火山から噴出した.大勝カルデラの形成後,横岳,南横岳,北横岳の少なくとも 3 つの溶岩ドームが形成された.複数の火砕流がこれらの溶岩ドームの形成に伴って発生し,そのうち南横岳から噴出した火砕流堆積物からは 1.9 万年前の年代が得られている.7,900 年前ごろの横岳・南横岳・北横岳の馬蹄形崩壊によって岩屋口岩屑なだれ堆積物が発生した.この崩壊地形の内部に前岳火山が成長した.落しの平,燃岳火山及びそのほかいくつかの小規模な溶岩ドームが前岳溶岩ドームの形成後に成長した.口之島火山の過去 4 万年間の噴出率はおよそ 8.5 × 104m3/yr と見積もられ,こられは琉球弧や東北日本弧火山フロントの代表的な火山に比べてかなり小さい.燃岳火山は口之島の中で最も新しい溶岩ドームである.燃岳 溶岩ドームの山頂部には幾つかの爆発火口が開口しており,これらは前岳溶岩ドーム上で水蒸気爆発が繰り返し発生したことを示している.最新の水蒸気噴火は 18 世紀以降の可能性がある.