著者
鈴木 達也 齊藤 暁
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.157, no.2, pp.134-138, 2022 (Released:2022-03-01)
参考文献数
30

新型コロナウイルスをはじめとして,数多くのウイルス感染症がRNAウイルスによって引き起こされている.RNAウイルス感染症の制御には,ウイルス増殖機構の包括的理解が不可欠である.また,一般にRNAウイルスは進化速度が速いため,抗ウイルス薬への耐性株や中和抗体,細胞性免疫など宿主免疫からの逃避株について,変異株のウイルスゲノムに出現した変異がどのようなメカニズムで耐性を獲得しているのかを解明することは極めて重要である.これら変異株の解析を行う上で,組換えウイルスの人工合成法(リバースジェネティクス法)は重要なツールであるが,従来の方法は特殊な技術やツールが必要で,ウイルスの回収までに長い時間を要するという課題があった.近年開発されたcircular polymerase extension reaction法(CPER法)はウイルスゲノムを複数に分割することで,それぞれのゲノム断片を大腸菌プラスミド内で比較的容易に維持可能であり,極めて迅速に変異体の作成が可能である.著者らはこれまでデングウイルス,日本脳炎ウイルス,ジカウイルスなどのフラビウイルスを中心に研究を進めてきたが,最近は同技術を新型コロナウイルス研究に応用することで,ウイルス増殖機構の解明に取り組んでいる.本総説では,同技術の特徴や応用例,今後の発展性について紹介したい.

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