著者
吉本 真
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.166-175, 2020 (Released:2020-08-07)
参考文献数
93

肝臓は門脈によって腸管と直接繋がっている.近年,腸肝循環を介して腸管由来の因子が肝疾患の発症や悪化に非常に大きな役割を担っていることが明らかにされている.ヒトの腸管には数百種類の腸内細菌が定着しているといわれており,次世代シークエンスやメタボローム解析技術の発展により,予想以上にヒトの健康,特に肝機能に深く関与していることが示されている.様々なストレスで腸管バリアが破たんすると,リポ多糖(Lipopolysaccharide: LPS)やリポタイコ酸(Lipoteichoic Acid: LTA)などが肝臓のTLRなどを介した炎症シグナルを誘導し,肝線維化や肝臓がんを促進する.さらに,胆汁酸はファルネソイド X 受容体(Farnesoid X Receptor: FXR)やGタンパク質共役受容体(Transmembrane G protein-coupled Receptor 5: TGR5)などを介して代謝関連の遺伝子発現を調整し,肝臓の恒常性を維持する一方で,一部の腸内細菌の働きにより,デオキシコール酸(Deoxycholic Acid: DCA)やリトコール酸(Lithocholic Acid: LCA)などの二次胆汁酸が過剰に蓄積すると肝障害や肝臓がん促進に繋がるストレスを誘導する.腸肝軸(Gut-Liver Axis)を介した肝疾患の発症メカニズムを解明することは,肝疾患の予防を目的とした腸内細菌叢の制御方法の開発に繋がると考えられる.

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