著者
鈴木 彩
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.90, pp.32-47, 2014-05-15 (Released:2017-06-01)

「婦系図」が新派劇に脚色された際に加えられた「湯島天神境内」の場面を、後に泉鏡花が書き改めたことは、お蔦と主税の物語に焦点を当てた劇化への追従と見做されてきた。だが初期の上演には原作を意識した部分も多く、鏡花の「湯島の境内」はそこに原作に関わる要素を加え、他の場面との接続を円滑にしている。原作とは異なるようにみえる主税像も、河野家との対立関係においては原作の主税の立場に通じる。また鏡花の「湯島の境内」を加えた新派劇と、後の「婦系図」の改訂も相似形を成し、原作を志向した「湯島の境内」の書き改めが、「婦系図」の新たな形態を提起した可能性も考えられる。「婦系図」の劇化は原作から断絶したものではなく、原作テクストとの関係の中から捉え直される必要がある。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (5 users, 6 posts, 4 favorites)

The famous climax of the drama takes place under blossoming plum trees at Yushima shrine, where Chikara tells Otsuta they must part. The now classic scene was not in the original novel and was added when it was adapted for Shinpa theater in 1908. https://t.co/IcXPCJBpo1 https://t.co/hToRxVnbME

収集済み URL リスト