- 著者
-
伊藤 淳史
- 出版者
- 日本農業経済学会
- 雑誌
- 農業経済研究 (ISSN:03873234)
- 巻号頁・発行日
- vol.92, no.2, pp.165-177, 2020-09-25 (Released:2020-12-25)
- 参考文献数
- 26
本稿ではPL480タイトルIIによる学校給食贈与の成立過程について日米両政府の公文書に基づき検討し,以下の点を明らかにした.第1に,アメリカ政府は食生活改善のため脱脂粉乳贈与を提案したが,日本政府は粉食奨励による国際収支改善を訴え小麦贈与を認めさせた.第2に,日米二国間の利害だけでなく他国との協定の影響により交渉は難航した.第3に,日米は学童服への綿花贈与でも合意したが加工費負担問題により断念された.第4に,贈与小麦はパン用小麦でないためカナダ産小麦とのブレンドが必要だった.以上の知見は,学校給食によるパン食の普及を通じたアメリカ小麦市場開拓という従来の見解が成り立たないことを示すものである.