著者
鳥居 邦夫
出版者
日本口腔・咽頭科学会
雑誌
口腔・咽頭科 (ISSN:09175105)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.245-254, 1995-06-01 (Released:2010-06-28)
参考文献数
21
被引用文献数
1

われわれは摂食時に口腔内に遊離してくる栄養素等の小分子量の物質を味覚として認識することにより, 食物を上手に選択して生存に必須なエネルギー源, 電解質源, 蛋白質源を, それぞれ甘味, 塩味, うま味として過不足の生じないように食べ, そして味が好ましくない毒物や腐敗物の摂取を拒否している.グルコースはエネルギー産生系の中心的な基質であり, 主として炭水化物を分解し, そして肝などで糖原性アミノ酸などから生合成されて得ており, 体温の維持と行動の熱源として利用される.運動等による熱源不足そして糖尿病発症により甘味嗜好性が惹起される.体液の恒常性維持, 特に血中電解質濃度や体液量は神経系, 内分泌系により厳密に調節されている.主要なナトリウムが欠乏すると強い食塩嗜好性が発現する.又, 本態性や高アルドステロン性高血圧症患者では, 唾液中Na濃度が上昇し, 並行して塩味閾値も上昇, 強い塩味嗜好性を示す.うま味物質はアミノ酸 (特にグルタミン酸) と核酸関連物質であり調味料として我国で発見された.うま味物質は動植物の組織に普遍的に分布し, 蛋白質摂取と密接に関わっていると考えられる.個々のアミノ酸はそれぞれ異なる味をもち, 特定アミノ酸の欠乏においては人も動物も味を手がかりに定量的に選択摂取することが出来る.味覚は又, 消化吸収を調節し生体恒常性維持に役立っている.

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

https://t.co/TROV8lb60C 味覚の形成とその栄養生理学的役割 ほー

収集済み URL リスト