著者
田口 義広 百町 満朗 杖田 浩二 川根 太
出版者
日本植物病理學會
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.94-101, 2003 (Released:2011-12-19)

IK-1080の菌濃度を1.0×10(8)cfu/mlとした懸濁液1.0mlを、トマト果実の着果促進を目的としたホルモン処理と同時に花弁に散布すると、花弁における灰色かび病の発生は著しく抑制された。散布直後の花弁におけるIK-1080の菌量は1.9×10(7)cfu/mgだったが、処理後の花弁の菌量は7.9×10(9)cfu/gとなり約400倍増加していた。無処理区の花弁上にはBotrytis属菌を含む10種類以上の糸状菌が認められたが、IK-1080を散布した花弁では5種類に減少し、Botrytis属菌は出現しなかった。このように菌相の単純化が認められた。トマト栽培では受粉に訪花昆虫のマルハナバチがよく用いられている。そこで、マルハナバチに、灰色かび病菌に拮抗的なIK-1080を運ばせることで花弁の灰色かび病が防除できるかを検討した。はじめに媒介用のアダプターを4種類試作した。箱型のアダプターは出巣したマルハナバチが帰巣しなくなった。箱内に1本の紐を渡した型と円筒の中にパフを敷いた型のアタプターは、帰巣しても巣に入りたがらない行動が認められ、花粉球の落下も多かった。一方、出入口分離型はマルハナバチの出巣個体数が1時間当たり12頭と多く、時間当たりの帰巣率も77.8%と高かった。また、マルハナバチの運んできた花粉球の落下が最も少なく、果実の着果率も96~98%と高かった。この出入口分離型のアダプターを用いるとマルハナバチの身体に1頭当たり6.0×10(4)cfuのIK-1080が付着していた。マルハナバチにIK-1080を運搬させると、訪花20日後の花弁の菌量は10(6)~10(7)cfu/mgと増加した。また、灰色かび病の発生は著しく抑制された。マルハナバチにIK-1080を運搬した花弁でも、ホルモンと同時処理の時と同じようにBotrytis属菌の出現は認められなかった。本法は著しく省力的で、アダプターに入れるIK-1080の量は1回当たり(7日間分)3gと少なかった。

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