著者
神尾 真司 田口 義広
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.137-142, 2009 (Released:2009-04-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1

岐阜県飛騨地域におけるモモ幼木の主幹部の障害および枯死樹の発生原因を解明するため,モモ台木用品種を複数供試して根圏土壌中の線虫密度の品種間差,生育に及ぼす影響ならびに障害樹,枯死樹発生との関連を調査した.土壌から分離された植物寄生性線虫のうちキタネグサレセンチュウと枯死樹発生との関係は明らかでなかった.ワセンチュウには品種間差が認められ,密度の高い‘おはつもも’は細根が脱落減少し,障害樹,枯死樹の発生率が高かった.一方,密度の低い‘ひだ国府紅しだれ’は発生率が低かった.これらのことから,主幹部障害と枯死樹の発生原因としてワセンチュウの関与が考えられた.
著者
田口 義広 百町 満朗 杖田 浩二 川根 太
出版者
日本植物病理學會
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.94-101, 2003 (Released:2011-12-19)

IK-1080の菌濃度を1.0×10(8)cfu/mlとした懸濁液1.0mlを、トマト果実の着果促進を目的としたホルモン処理と同時に花弁に散布すると、花弁における灰色かび病の発生は著しく抑制された。散布直後の花弁におけるIK-1080の菌量は1.9×10(7)cfu/mgだったが、処理後の花弁の菌量は7.9×10(9)cfu/gとなり約400倍増加していた。無処理区の花弁上にはBotrytis属菌を含む10種類以上の糸状菌が認められたが、IK-1080を散布した花弁では5種類に減少し、Botrytis属菌は出現しなかった。このように菌相の単純化が認められた。トマト栽培では受粉に訪花昆虫のマルハナバチがよく用いられている。そこで、マルハナバチに、灰色かび病菌に拮抗的なIK-1080を運ばせることで花弁の灰色かび病が防除できるかを検討した。はじめに媒介用のアダプターを4種類試作した。箱型のアダプターは出巣したマルハナバチが帰巣しなくなった。箱内に1本の紐を渡した型と円筒の中にパフを敷いた型のアタプターは、帰巣しても巣に入りたがらない行動が認められ、花粉球の落下も多かった。一方、出入口分離型はマルハナバチの出巣個体数が1時間当たり12頭と多く、時間当たりの帰巣率も77.8%と高かった。また、マルハナバチの運んできた花粉球の落下が最も少なく、果実の着果率も96~98%と高かった。この出入口分離型のアダプターを用いるとマルハナバチの身体に1頭当たり6.0×10(4)cfuのIK-1080が付着していた。マルハナバチにIK-1080を運搬させると、訪花20日後の花弁の菌量は10(6)~10(7)cfu/mgと増加した。また、灰色かび病の発生は著しく抑制された。マルハナバチにIK-1080を運搬した花弁でも、ホルモンと同時処理の時と同じようにBotrytis属菌の出現は認められなかった。本法は著しく省力的で、アダプターに入れるIK-1080の量は1回当たり(7日間分)3gと少なかった。
著者
杖田 浩二 田口 義広 勝山 直樹
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.51, no.3, pp.197-204, 2007-08-25
被引用文献数
2 7

タバココナジラミバイオタイプBの成虫および未熟ステージを用いて, 25, 40, 45および50℃で一定時間処理することによって本種の高温耐性について調査した.その結果,温度が高くなれば,短い時間でも死亡率が上昇し,50℃で成虫は0.5時間,蛹は7時間,幼虫は5時間ですべての個体が死亡した.施設内部のトマトをすべて抜根し,施設をビニールで密閉して太陽熱処理を行ったところ,ほぼすべての個体を閉じこめ,死亡させることができた.しかし,施設内部で誘殺が確認されなくなるには3日かかり,室内実験の結果から予測されるよりも長い時間を要した.これは施設内部の高さによって温度差が生じるため,葉温が気温ほど上昇せず,高温を回避した成虫や低位置の葉に寄生する蛹が生存・羽化するためと考えられた.以上のことから,太陽熱処理でタバココナジラミバイオタイプBの防除をするには,十分な温度が確保される晴天日に, 3日程度施設を閉鎖する必要があると考えられる.