- 著者
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竹田 謙一
神山 洋
松井 寛二
- 出版者
- 信州大学農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター
- 巻号頁・発行日
- no.5, pp.55-63, 2007 (Released:2010-04-05)
家畜福祉に対する関心が世界的に広まりつつあり、2004年に開催されたOIEの第72回年次総会で家畜福祉に関する基本原則が採択された。特に断尾などの肉体の切断は、家畜福祉の視点から問題視されている。本研究では、断尾農家、非断尾農家各19戸に断尾に関する聞き取り調査を直接面接法で行った。調査内容は1)飼育方法、2)断尾の利点と欠点、3)断尾をしない理由、4)家畜福祉に関する設問とした。各質問項目の結果は以下のとおりであった。1)経営規模、飼育方法、1人あたりの搾乳頭数ではなく、ミルキングパーラーの形態が断尾の実施と関係していた。2)断尾の実施はゴムリング(84%)を用いて、夏を除く全ての季節に行われてた。断尾の利点として、「汚い尾で叩かれない」と回答した断尾農家数は非断尾農家数の2.6倍にもなり、また、「糞尿を撒き散らさない」は断尾農家からしか得られず、糞尿による汚染に起因しているこれら2つの項目で顕著な差が認められた。断尾の欠点として、非断尾農家の多くは、ハエが追い払えないことを挙げた。断尾農家は断尾部位の菌による感染、ハエや埃を払えないという衛生面を挙げた。3)非断尾農家の半数以上は「断尾の必要性を感じていないから」と答えた。また、「ウジを尊重したいから」、「ウシがかわいそうだから」というようなウシに対する倫理的配慮を求めた回答も多かった。4)38戸のうち23戸(60.5%)が家畜福祉の言葉を聞いたことがなく、家畜福祉に対する酪農家の関心の低さが伺えた。酪農家の関心が高かった搾乳牛のストレス項目は、断尾農家、非断尾農家にかかわらず、「行動抑制」76.3%、「飼育環境」63.2%、「繁殖方法」31.6%であった。