- 著者
-
牧田 道夫
- 出版者
- 農林水産省農業生物資源研究所
- 巻号頁・発行日
- no.6, pp.103-172, 1994 (Released:2012-09-24)
I部では,まず,新資源植物に対する過去と現在の内外の取り組み及び新資源植物の重要性を調べた.すなわち,今日の主な栽培植物は古代文明の発生時に殆どが出現し,その後,今日まで重要な新栽培植物は出現しなかったのであるが,栽培植物発生地域から他地域への伝播は活発に行われ,特に16世紀以降の大航海時代とそれに続く欧州諸国の植民地統治時代に活発になり,積極的に新資源植物の探索,収集が行われた.その後もこの取り組は地道に継続されてきた.現在,新資源植物に対する関心が内外共に高まっている.それは長期的には人類の将来の食糧,産業資源問題と現代の世界規模の地域開発等による資源の滅失問題,短期的には我が国も含めた先進国の生産者,消費者ニーズへの対応と開発途上国の食糧増産のためである.新資源植物を開発の素材の面から二つに分けることができる.一つは栽培化に必要な栽培型の諸特性が,ある程度獲得されている植物と,他は野生型の特性を強く残している植物である.前者は21世紀内外の比較的短期のニーズを目標とする開発に適した素材であり,後者は21世紀以降の長期的な展望のもとの開発に向いている.次に,我が国における新資源植物の果たすべき役割,確保の方向について述べた.新資源植物は既存の栽培植物にとって換わる立場でなく,住み分けて考えるべきで,用途,機能,物質生産において新しい需要を創出するものである.将来の食糧増産の方策は,先ず第一に既存の主要栽培植物を基本の素材としてその延長上にこれらの遺伝的変異の拡大を計るべきである.一方,新資源植物の役割を次の6項目の分野の面から示した.1)生産物質の面,2)利用形態の面,3)工業用原料の面,4)生体機能の面,5)耕地環境保全の面,6)不良環境地帯の耕地利用の面.II部ではI部で述べた新資源植物の果たすべき役割の考え方を念頭に置いて,内外の単行本,論文,事典,業務資料から107種の新資源植物を選定し,それらの情報を簡潔に示し,考察を加えた.