著者
古賀 秀昭 荒巻 裕
出版者
佐賀県有明水産振興センター
巻号頁・発行日
no.26, pp.13-24, 2013 (Released:2014-01-30)

有明海湾奥部において,タイラギは干潮線付近から水深10数メートルの主に砂泥底に生息しており,その漁法は,従来,干潟での徒捕りと水深が深い場所での鋤簾曳きによる漁業が主であったが,1919年にヘルメット式潜水器が正式に導入された。それ以降,漁獲量は飛躍的に増加したものの,豊凶を繰り返してきた。しかしながら,1999年以降,漁場の縮小や立ち枯れ斃死等により100年近くのヘルメット式潜水器の歴史の中でも特異的な不漁が続いている。このような中,2008年に泥質の湾奥西部海域で稚貝の大量発生が見られ,2009年漁期まで順調に成育したことから,12漁期ぶりに貝柱で100トンを超える豊漁となった。この要因として,貝殻細片などの着底基質が海底表面に現れた状態の中,浮泥の堆積が極めて少なかったことによりタイラギ幼生の着底・変態が成功し,その後も極端な高水温,低比重,貧酸素に曝されなかったことなど,気象,海況にも恵まれたためと推察された。

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