著者
向井 千夏 奥野 誠
出版者
日本哺乳動物卵子学会
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.176-182, 2010 (Released:2011-07-26)

体内受精を行う哺乳類では、精子鞭毛は射精にともない運動を活性化し、雌生殖器官内での受精能獲得時には超活性化と呼ばれる運動を示す。精子は卵に出会うまで、鞭毛運動を維持するためにATPが必須であるとともに、活性化や超活性化の運動変化を引き起こす細胞内シグナル伝達においても、cAMPの生成やタンパク質リン酸化にATPが必要となる。ATPの供給経路としては解糖系と呼吸系の2つがあげられるが、従来、精子の形態やその生産効率からミトコンドリアによる呼吸系が主であると考えられてきた。しかし、近年の研究成果により、鞭毛主部における解糖系によるATP供給が主要な働きをしていることが明らかとなってきた。本稿では、マウスでの知見を中心に、精子の鞭毛運動とシグナル伝達に関わるATP供給について解説する。

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