- 著者
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狩野 賢司
- 出版者
- The Ichthyological Society of Japan
- 雑誌
- 魚類學雜誌 (ISSN:00215090)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.173-180, 1995-08-15
- 被引用文献数
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クロソラスズメダイの雌が配偶者を選択するタイミングと雄の求愛ディスプレイの頻度変化を沖縄のサンゴ礁で調査した.本種は雌雄ともに縄張りを持ち, それらが集まってコロニーを形成する.雌は早朝に雄の縄張りで産卵し, 雄が孵化まで卵の保護を行う.雌が産卵する朝だけでなくその前日の早朝と夕刻にも, 多くの雄がその雌の縄張りを訪れ, 頻繁に求愛ディスプレイを行った.雌は産卵当日の朝に雄からディスプレイを受ける前に産卵を始めることが多く, これらの雌は産卵前日により多くのディスプレイを行った雄と産卵していた.これらの結果から, 本種の雌は主に産卵前日の求愛ディスプレイ頻度によって配偶者となる雄を選択していることが示唆された.一方, 産卵前日にあまり求愛を受けなかった雌は, 産卵開始時刻を遅らせて雄からディスプレイを受ける傾向があり, これに対応して, 雄は産卵前日ばかりでなく産卵が行なわれる朝にも頻繁に求愛していると考えられた.