- 著者
-
田島 清孝
南里 真人
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.116, no.4, pp.209-214, 2000-10-01
- 参考文献数
- 14
- 被引用文献数
-
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ミオクローヌスは一連の筋肉群に発生する突然,急速,短時間の不規則な不随意運動であり,進行性ミオクローヌスてんかん,低酸素脳症,アルツハイマー病などの疾患に伴って出現する,希ではあるが機能障害を示す極めて難治性な疾患である.ピラセタム (2-oxo-1-pyrrolidin-eacetamide,ミオカーム®)は30年以上も前に開発された環状γ-アミノ酪酸 (cyclic GABA) の誘導体であり,認知記憶障害の治療薬としてヨーロッパ各国で臨床使用されている.更に,ピラセタムは皮質性ミオクローヌスに対する抑制作用が報告されているが,ミオクローヌスの原因が不明であり,ピラセタムのミオクローヌスに関する基礎試験はほとんどなされていない.今回,ラットに尿素を過剰量投与した際誘発されるミオクローヌスに対するピラセタムの抑制作用を筋電図により検討し,抗てんかん剤クロナゼパムの抑制効果と比較した.尿素 4.5g/kg (i.p.) で誘発されるミオクローヌスにおいて,ピラセタム300mg/kg (i.p.) およびクロナゼパム 0.3mg/kg (p.o.) は,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.また,それぞれ単独では効果を示さない用量のピラセタム 100mg/kg とクロナゼパム 0.03-0.1mg/kg を併用すると,有意なミオクローヌス抑制作用を示した.体内動態試験では,本剤は経口投与後,体内でほとんど代謝されず,ほぼ全量が尿中に未変化体として排泄され,ヒト血清タンパク質との結合率は低かった.7日間反復投与 P-I 試験においても,本剤は蓄積性を示さなかった.臨床試験は,イギリスでプラセボを対照薬とした二重盲検交叉法試験を実施し,皮質性ミオクローヌスに対する改善作用が示された.国内のP-II試験では,ミオクローヌスの有意な抑制作用と患者の quality of life (QO:L) の改善作用が示された.以上の結果から,ピラセタムは抗てんかん剤と併用することで難治性ミオクローヌス患者のミオクローヌスを抑制し,QOLを改善するという臨床上の有用性を示すことが明らかとなった.