著者
高橋 保雄 森田 昌敏
出版者
一般社団法人 日本環境化学会
雑誌
環境化学 : journal of environmental chemistry (ISSN:09172408)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.455-464, 1998-09-17
参考文献数
15
被引用文献数
5 7

河川水を原水とした水道水では総ハロゲン化消毒副生成物濃度は冬季に最低値 (50μg/l弱) を示した後, 徐々に増加し, 8月に最高値 (200μg/l強) を示した。ハロゲン化消毒副生成物を類別に見ると, ハロ酢酸, トリハロメタンはメジャー成分であり, ハロアセトアルデヒド, ハロアセトニトリル, ハロアセトンは中間成分であり, ハロプロピオン酸, ハロニトロメタンはマイナー成分であった。なお, 中間成分ではハロアセトアルデヒド濃度は必ずハロアセトニトリルより高かった。個々のハロゲン化消毒副生成物を見ると, トリハロメタンではクロロホルムは明白に季節変動を示し, プロモジクロロメタン, ジブロモクロロメタン, プロモホルムの順に濃度は極端に低くなっていた。ハロアセトニトリルではメジャー成分であるジクロロアセトニトリルは季節変動を示し, マイナー成分であるプロモクロロアセトニトリル, ジブロモアセトニトリルは一年中ほぼ一定であった。ハロアセトンではメジャー成分である1, 1, 1-トリクロロアセトンは季節変動を示し, マイナー成分である1, 1-ジクロロアセトンは全く季節変動を示さなかった。ハロアセトアルデヒドではメジャー成分であるトリクロロアセトアルデヒドは季節変動を示したが, マイナー成分であるジクロロアセトアルデヒドは季節変動を示さなかった。ハロ酢酸ではメジャー成分としてジクロロ酢酸, 中間成分としてトリクロロ酢酸, マイナー成分としてプロモクロロ酢酸, ジクロロブロモ酢酸等であった。ハロプロピォン酸では多くは2, 2-ジクロロプロピオン酸, 一部2, 3-ジクロロプロピオン酸であった。<BR>地下水を混合した水道水では総ハロゲン化消毒副生成物濃度は冬季, 夏季で二分し, 約100μg/l~約200μg/lである場合と, 季節間の差が認められず100μg/l弱~約150μg/l強である場合があった。中間成分のハロアセトアルデヒド濃度がハロアセトニトリルより低かった以外では, ハロゲン化消毒副生成物の類別量の順位は河川水を原水とした水道水と同じであった。河川水を原水とした水道水中の個々のハロゲン化消毒副生成と比較して, トリハロメタンではプロムを含有したトリハロメタンが増加し, ハロアセトニトリルではジブロモアセトニトリル, ハロアセトアルデヒドではトリブロモアセトアルデヒド, ハロ酢酸ではジブロモクロロ酢酸が高い濃度で検出されていた。逆に濃度が低かった副生成物としてジクロロ酢酸がある。<BR>高度処理を施した水道水では総ハロゲン化消毒副生成物濃度は季節間の差が認められず, 約50μg/l~約100μg/lの濃度であった。ハロゲン化消毒副生成物の類別量の順位は地下水を混合した水道水と同じであった。そして, 河川水を原水とした水道水中の個々のハロゲン化消毒副生成物と比較して, 全てのハロゲン化消毒副生成物の濃度は低かった。<BR>同一水道水を供給されても, 受水槽・高置水槽を経由した水道水は水道本管からの水道水に比較して, 総ハロゲン化消毒副生成物の濃度は高く, また受水槽・高置水槽中の滞留時間の長い水道水程, 総ハロゲン化消毒副生成物の濃度は高かった。今回調査した受水槽・高置水槽は比較的密閉状態であったので, ハロアセトン以外の類別ハロゲン化消毒副生成物, 及び類別のメジャー成分である個々のハロゲン化消毒副生成物も滞留時間の増加, 即ち有効残留塩素の接触時間に相関して増加していた。

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