著者
成田 光好 羽生 和弘 関口 秀夫
出版者
日本プランクトン学会
雑誌
日本プランクトン学会報 (ISSN:03878961)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.127-135, 2002-08-25
参考文献数
17
被引用文献数
1

伊勢湾は本州中央部の太平洋岸に位置し、その平均深度は19.5m、湾中央の最深部は約35m、面積は約1738㎡であり、少なくとも70m以上の水深をもつ伊良湖水道を通して外海沿岸域と海水交換をおこなう半閉鎖的な湾である。その海底地形からも明らかなように、湾中央の最深部から愛知県側にかけての海底勾配はどちらかといえば急峻であり、三重県側にかけては緩やかな勾配の海底が続いている。伊勢湾奥部には本邦有数の河川である木曽三川から大量の淡水が流入し、一方、湾口部の伊良湖水道を通して高水温・高塩分の黒潮系沿岸水が湾内に進入しているので、そこでは典型的なエスチュアリー循環流(密度流)が卓越している。伊勢湾や東京湾や大阪湾と同規模の内湾であり湾奥部に大河川が流入していることでもこれらの湾は共通している。伊勢湾の北部域から湾中央域にかけての海底にはシルトー粘土の底土が、湾口域には砂質底が湾南部域の三重県沖には粗砂ー砂礫または礫の底土が広がっている。近年、伊勢湾の北岸及び西岸に位置する都市からの汚水廃棄のために、伊勢湾の富栄養化は著しく、しばしば赤潮の発生が報告されている。伊勢湾の底層の溶存酸素量は季節的に著しく変動することが知られており、とくに夏季においては湾中央域から三重県側の西部域を中心に貧酸素域が発達し、秋季から冬季には海表面の冷却と季節風による鉛直混合の強化によって湾全域の底層において溶存酸素量の回復が見られる。

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